青年期のモヤモヤという自然現象
青年期、特に中学生ぐらいになると、意味もなくモヤモヤすることが多くなります。
そもそも、急激に大人へと身体的な変化をする時期ですから、ホルモンバランスも当然変化するのではないでしょうか。
よく考えたら、私もすでに40代。
ちょっと先に待ち受けるのが更年期障害。
更年期障害といえばホルモンバランスが崩れて、イライラしたり、うつっぽくなったりする、と話にききますが、よく考えると、青年期である中学生だって、イライラしたり、モヤモヤしたり、うつっぽくなったりするのも至極当然な気がします。
さらに、青年期は身体の変化とともに、脳の（「心の」と言ってもいいかもしれません）変化も起こっていると思います。
今までは、親や学校の先生、つまり周りの大人から、「勉強しなければいい大人になれない」「しっかりと挨拶をしなければならない」などの価値観を与えられて、子どもたちは自分の基準を持っていませんから、何の抵抗もなく、その価値観を受け入れてきたわけです。
ところが、中学生ぐらいになると、そろそろ自分というものを認識するようになってきます。
いわゆるアイデンティティの危機といわれるものですが、未完成ながらも自分の価値観を大事にしよう、大事にしたいと思うようになります。
その結果、大人が与える価値観に対して、自分の価値観を持ち合わせていないが故に、とりあえずその与えられた価値観がもっともであればあるほど、それを受け入れることそのものを、自分らしくあるために否定します。
つまり、大人の価値観に対して、無条件降伏をしてしまう自分がどうにも嫌なのです。
変化を受け入れられない親
いずれにせよ、身体的にも精神的にも、自分で自分を制御できない時期が、ちょうど中学生の時期だということになります。
こうなると、親としてはもうたまりません。
今まで、よい子だったのに急に悪い子になった気がしてきます。
中には自分の子にキツネやタヌキが取り憑いたのではないかとまで思う人もいるのではないでしょうか。
そこまででなくとも、その変化の原因を、自然現象だと思えずに、ましてや自分の子どもそのものと考えられず、結局、関わりのある友人や先生に押しつける親も出てくるでしょう。
そりゃそうです。
原因さえわかれば、昔のよい子に戻ってくれるに違いないという幻想を抱いてしまうのが人の性ですし、もっというと、原因を子ども意外のどこかに求めなければ、親は子どもそのものを悪と認定するか、それを育てた自分が悪の根源でなのではないかという恐怖に、それこそ取り憑かれてしまいまうからです。
キツネやタヌキに取り憑かれた方がマシってものです。
メタモルフォーゼ
しかし、それでは建設的な解決は生まれません。
もし親が、子どものそういった自然な変化について、他人のせいにしたりすれば、親は当然、子どもが今存在している環境に対して攻撃的になりますし、そうすればその子どもの今存在している環境が心地よい有益な居場所ではなくなってしまいます。
こういった状況はその子ども本人にとって、多くの場合あまり好ましい結果を生まないでしょう。
イモムシはサナギになって、蝶になります。
ちなみに、サナギの中身がどうなっているかご存じですか？
実は、中身はドロドロ……なんです。
そこには、イモムシの姿も蝶の姿もありません。
イモムシからいったんドロドロになって、蝶の姿への再構成し直すのだそうです。
私は、人間の青年期、ちょうど中学生ぐらいが、サナギの時期にあたるとイメージしています。
まさに、外側は人間の姿をしていても、中身はドロドロなんです。
今までの仮の姿、つまり大人が形作ってくれた「子ども」をドロドロに溶かして、自分がなりたい「大人」に再構成し直しているのです。
そりゃぁ、もう、ぐちゃぐちゃで、見るもおぞましい状態でしょう。
でも、その時期がなければ「大人」になれないような気がします。
お父さんやお母さんと同じような、立派でなくとも、普通の大人になれない気がします。
もちろん羽化の時期に早い遅いの個体差はあるでしょうし、残念ながら素晴らしく美しい羽をもった蝶に絶対になるわけでもないでしょう。
でも、それでも。
イモムシに羽がついているという、蝶とも思えない得体の知れないものになってしまうのは、もっともっとおぞましいことではないですか？
私としては、青年期にはそういった自然現象が起こるものだと頭でできるだけ理解して、形だけでもワクワクしながら我が子のドロドロ期を待ちたいと思います。
皆さんも、そんなイメージで我が子が羽化するのをじっくり観察してみてはいかがですか。
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