勉強のやり方
長く学習塾や中学校の教員をやっていると、本人から直接聞くことは滅多にない言葉で、しかも判を押したように、保護者から又聞きで聞く台詞に「勉強のやり方がわからない」というものがありますね。
まずは、勉強の仕方を再度確認しましょう。
① 何か(授業・教科書・参考書)から学ぶ学習内容を設定します。
② それらを理解しようと試みます。
③ 本当に理解できているかを問題演習で確認します。(正解できたなら終了。正解できなければ次へ進む。)
④ 問題演習が滞りなくできなかったら、その問題の解説を理解します。(解説が理解できたら③に戻る。理解できなければ次へ進む。)
⑤ 解説が理解できない場合は、何か(授業・教科書・参考書)に戻って理解をする、もしくは深めます。(理解できたと思ったら③に戻る。理解できなければ次へ進む。)
⑥ それでも理解できない場合は、教員・友人などに教えてもらいます。(理解できたと思ったら③に戻る。理解できなくてもとりあえず……。)
⑦ ③に戻ります。問題が解けるまで繰り返します。
【注意事項】
①設定はできる限り狭く、具体的な内容にしましょう。
②理解しようと試みるだけで構いません。理解しているかどうかはこの後わかることです。できれば「あぁ」と納得できればいいなぁという感じです。
③適正な時間を計って問題演習を行います。多くの場合、必要以上に長い時間をかけて問題を解くことは、学習にとっては非効率的な行為です。
④解説を理解するために、使用する問題集は、できれば解説がしっかりしていることが望ましいでしょう。
⑤問題集をやった後に、教科書に戻って線を引いたり、書き込みをしたりしてください。
⑥解説を自分で読んで理解することは、今後の人生でとても重要です。わかりやすく説明してもらえることが当たり前になってしまわないようにしましょう。人の優しさに慣れてしまっては、勉強以前に人として問題があると思います。
⑦通常、最低3回は繰り返すものだと思ってください。
で、実際は……
さてこのように説明すると、生徒たちからは、「そんなことわかっているよ」とか「面倒くさい」「時間がない」などなどの言葉が返ってきそうですね。
私はそういう言葉を聞いて安心します。
なぜ、安心?
だって、みんな、勉強のやり方はわかっているんだなぁって。
つまり、多くの「勉強のやり方がわからない」という発言をする中学生は、「勉強のやり方がわからない」のではなくて「楽して勉強ができるようになる方法がわからない」ということなんですね。
ここが重要です。
実は彼らは、勉強のやり方は基本、面倒でつまらないものだと理解した上で「楽してできるようになる方法がわからない」と言っているのです。
安心しますね。
世の中の親の皆さん。先生がた。
あなたの心配しているその子は、しっかりと勉強のやり方を理解していますよ。
繰り返さなければならない面倒なことだということを。
ただね。
それをやるのが嫌なんです。
「もっと楽な方法はないかなぁ」「やらなくてできる方法はないかなぁ」と日々思っているだけで、実は何をしたらいいかは十分理解しているのです。
そんな楽な方法があるか?
これは困りました。
少なくとも、やらなくてもできるようになる方法は、私には思いつきません。
楽な方法……。
負担が少ないという意味での楽な方法は、……えっと……。
その行為が好きになる、とか、動機を強く意識する、などがあります。
楽しみながらやる、というのもいいかもしれません。
そういう方法を知りたい?
そういうことですか。
なら、答えは簡単です。
脳を上手にだますことです。
ああ、楽しいなぁって脳に思わせることです。
え、どうやってだますかって?
簡単です。
やる気になればいいんです。
だから、どうやってやる気になるのかって?
生命にかかわる罰を与えるとか、成功報酬をあたえるなどの方法も当然ありますが、それらの方法を教育というのは、私としては「どうかなぁぁ……」という感じです。
で、方法です。
とりあえずやってみることです。
これが一番いい。
やることで脳内のやる気物質は出始めるという話は結構有名ですし、やることで、その中の失敗や不満から、それらを打開するための工夫を生むことができます。
ごまかさない ごまかされない
まぁ。
いずれにせよ「勉強のやり方がわからない」などという理由を全面に押し出して、「勉強をしない」という理由にするのは、さすがにちょっと自分で自分をごまかしている感じがするし、そういった自分で自分をごまかすという方法に慣れてくると、やはり人として成長も改善も得られない、そんな人生を送ることになるような気がします。
親も先生も、大人側がそういった子どもの発言に対して、同情的にならないようにしないと、その子どもにそういったごまかしをすることが正当な手段であると勘違いさせてしまうかもしれませんよ。